研究概要
機械力学、振動工学および制御工学を基盤分野として,モビリティに関する状態監視,人間工学,ヒューマン・マシン・インターフェース,自動運転および協調型システムの研究を行っています.
また,ELSIと呼ばれる非技術的課題にも取り組み,これらの技術の社会実装を目指しています.
主な研究テーマ(クリックで詳細へ)
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シェアード・コントロールの性能評価
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シェアード・コントロールとは,機械と人間が一緒になって制御を行うシステムを指し,自動車の運転支援技術の一部がこれに該当する.
力覚支援操舵を例にして,シェアード・コントロールの研究を行ってる.
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ドライバの意図に沿った将来の軌道の予測に基づく力覚操舵支援
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人間のドライバを支援するために,将来の軌道を予測できる機械学習モデルと触覚操舵支援システムの開発と評価を行う.
ドライビングシミュレータを用いた走行実験により,提案システムを評価した.
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インフラ協調型運転支援用ヒューマン・マシーン・インターフェイスの評価
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将来的には,自動運転レベル4の社会実装は商用車で先行し,自家用車ではレベル2の運転支援が一般道へと拡大していくと予想される.
また,レベル4の実装に向けては,信号情報や路側センサによる物標情報を車両へ送信するインフラ協調型システムの開発が進められている.
これを運転支援にも活用するため,ドライビングシミュレータ実験を通じて,有効なヒューマン・マシン・インターフェイス(HMI)の検討を行う.
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自動運転における状況受容の理解と最適化
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自動化および電動化技術の急速な発展により、ユーザーの心理的抵抗に起因する技術への受容低下は、高度化した自動車技術の実用化を妨げる要因となっている.
従来の研究では、受容は使用前に判断されるものとして捉えられ、実際のインタラクション中に変化する動的・状況的側面は十分に考慮されていない.
本研究では、このギャップを解消するためにドライビングシミュレーター実験を実施し、以下の検討を行う
(1)状況受容(Situational Acceptance)の定義と検証
(2)生理的特徴による受容レベルの指標化
(3)アイトラッキングデータと自設計機械学習モデルによるリアルタイム推定
(4)解釈可能なメカニズムに基づくゲーム化インタラクションによる最適化
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交通シナリオの理解に基づく周辺車両の走行軌跡予測
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正確かつ迅速な周囲の道路利用者の軌跡予測は,自動運転システムの知能向上において重要である.
複雑な交通シナリオでは,さまざまな行動やスタイルを持つ道路利用者や,さまざまな表示やゾーンを持つ道路が環境に複雑さをもたらす.
そのため,将来の軌跡を予測する際には,道路利用者と道路構造,交通ルールとの相互作用を考慮する必要がある.
本研究では,シナリオ理解に基づいた長期並列インタラクティブ軌跡予測手法を提案する.
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回転体におけるエネルギーハーベスティング
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環境に存在する微小なエネルギから発電を行うことをエナジーハーべスティングと呼ぶ。
ここでは、回転運動中に発生する振動エネルギを、圧電素子を用いて電気エネルギに変換する研究を行っている。
タイヤにセンサを埋め込むことなどが考えられているが、回転している環境下では、外部からエネルギを供給することが困難である。
この技術を用いれば、タイヤ内でセンサと無線送信機に必要な電力を得ることができる。
多安定系の非線形振動を用いて振動を増幅して、エナジーハーベスティングの性能を上げることを提案している。
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車輪/レール間の接触状態による新たな走行安全性の評価手法
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乗り上がり脱線に対する走行安全性は,脱線係数Q/Pを用いて評価される.
この評価手法は多くの実績があるものの,保守的な評価であり,高精度化が望まれる.
車輪/レール間の接触状態を考慮すれば,脱線係数で照査する安全限界の基準を緩和できるが,急曲線走行時は緩和効果が低い.
本研究では,接触状態を用いて,着眼点を変え,脱線係数による手法とは異なる新たな評価手法を提案する.
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携帯電話回線を利用した鉄道車両と自動車の統合型交通制御システム
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携帯電話のLTE通信を利用して、鉄道踏切と自動運転車両を統合して制御するシステムを提案し、その性能を、東京大学生産技術研究所千葉実験所のITS実験フィールド内の鉄道試験線と試験道路を用いた実験により検討することを目的とする.
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路車間協調を用いた横断歩道・踏切における電動車いすの運転支援
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携帯電話回線を用いて踏切や信号機を制御するシステムの利用を前提とし、電動車いすが踏切や横断歩道を通過するのを支援するシステムを提案する.
その有効性を実験によって示す。
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協調型レベル4自動運転モビリティサービス実現への取り組み
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2019年11月より,柏ITS推進協議会が実施主体となり,柏の葉キャンパス駅-東京大学柏キャンパス間に毎日(平日のみ),自動運転バス(レベル2運用)を走行させている.
その活動を2025年度中に柏市柏の葉地区でのレベル4自動運転(特定自動運行)の実施につなげるため,経済産業省・国土交通省RoAD to the L4(テーマ4)(通称CooL4)事業を6者によるコンソーシアムで受託し,自動運転バスと協調型システムの開発を行っている.
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ELSIを踏まえた自動運転技術の現場に即した社会実装手法の構築
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ELSIとは,Ethical, Legal and Social Implications/Issues (倫理的,法的,社会的課題)の略である.
新たな科学技術の発展に伴って生じるELSIについてあらかじめ研究し,対処する取組は、様々な分野で行われてきている.
「機械の犯すミスを人間、社会が受け入れることができるのか.」を根源的問いとして,自動運転技術をどのように社会に実装すべきかを検討した.
本取り組みは,科学技術振興機構(JST) 社会技術研究開発センター(RISTEX)による「科学技術の倫理的・法制度的・社会的課題(ELSI)への包括的実践研究開発プログラム」(RInCA)(令和2年度)に採択され,東京大学,明治大学,筑波大学の3者により,実施されたものである.
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信号認識を行う運転支援時のドライバ主導による運転引継ぎ
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信号認識を行う高度運転支援(ADAS)を行う際には,システムによる信号の未検知,もしくは誤検知があった場合には,ドライバがADASの異常に気づき,運転を引き継いて事故を回避する必要がある.
運転支援システムに未検知,誤検知があった際に,ドライバ主導の安全な介入が可能かの評価と適切な介入を促すヒューマン・マシーン・インタフェースの提案と評価を,ドライビングシミュレータ実験を通じて行うことを目的とする.
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自動運転バスの操舵制御設計
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高齢化や労働者不足が進む先進国において,移動手段の確保を目的とした自動運転バスの開発には大きな期待が寄せられている.
現状では車載センサのみで自己位置推定を行うには限界があるため,磁気マーカのようなインフラを用いて自己位置情報を補正することは有用な手段と言える.
しかし,適切なインフラ間隔(磁気マーカ間隔)やその有用性はまだ十分に示されていない.
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鉄道車両の減速度低下検知
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降積雪時には、車輪とレールの間に雪が入ったり、車輪と制動子の間に雪が入る等し、スリップやブレーキ力の低下が発生し、車両の減速度が低下する可能性がある.
鉄道の安全な運行を行うために、こうした状況を検知することは重要である.
将来的にはタブレット等を通じて情報を共有することができるシステムの構築を目指す.
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人間の意識的処理を考慮した運転安全性向上に資するインタフェースの研究
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人間は意識的な制御なく実行できるタスクに対して,タスクの構成要素を意識するとパフォーマンスは低くなるとされている(意識的処理理論).
従って,不適切な運転支援情報呈示は意識的処理を誘発して安全運転のパフォーマンスが低下すると推測される.
しかし,意識的処理を考慮した運転支援システム設計に有用な体系的な知見はほとんど見当たらない.
本研究では,交通事故死亡率の高い車線変更を対象に意識的処理理論を適用し,異なる特性の情報呈示がドライバの処理と安全運転パフォーマンスに及ぼす影響について検討している.
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地震時における編成鉄道車両の車両運動とその安全性評価
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日本は世界でも有数の地震大国であり,過去には地震により鉄道車両が脱線・転覆する事例は数少ないものの生じている.
鉄道の各分野においてさまざまな地震時の安全対策が進められているが,引き続き安全性向上に向けた取り組みが重要である.
一方、実車を用いて脱線・転覆が生じるような試験は困難であり,また,従来の車両運動シミュレーションでは主に脱線までの車両挙動が扱われてきた.
そこで,模型車両を用いて現象把握を行い,新たな車両運動シミュレーションを開発してこれらの課題を克服する研究を行っている.
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路面電車ドライバレス運用のための車両クリアランス判断のアルゴリズムに関する研究
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無人運転の路面電車サービスを社会に導入するためには、路面電車が周囲、特に前方の環境を把握する能力を備えることが不可欠です.
これは、事故の防止と最高レベルの運行安全性の確保に直結します.
本研究では、線路の中心から車両の両端までの距離を「車両クリアランス」として定義し、それを特定するアルゴリズムを提案します.
クリアランスの正確な特定により、走行経路上の障害物の有無を判断することが可能となります.
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実環境下での映像データ収集による鉄道と鹿の衝突回避策の検討
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鉄道における動物との支障は近年増加傾向している.様々な対策があるが,効果は不十分である.
特に動物支障は都市圏よりも地方圏での影響が顕著.車両数が少ないし、車両側で対策することは費用対効果が高い.
カラスなど鳥獣に忌避効果がある「マリン・サポニン」人間があまり感じなく,鳥獣類が敏感な光を発生する.鹿に忌避効果もある.
実験装置
